流行語大賞のトップテンにはいった「事業仕分け」で、選手強化費が削られたとして、11人の五輪メダリストが東京都内のホテル記者会見をおこない、怒りをこめてきびしい財政事情をうったえた。
記事をみて、ちょっとまえにノーベル賞受賞者や国立大学長先生たちがうちそろって、科学や学問の研究事業にかかわる「事業仕分け」へ異議を申し立てた。雁首をそろえてむずかしい顔をしている写真を思いだした。
あのときは、なんともはや違和感をおぼえた。みっともないったらありゃしない。いったいナニサマだとおもっているの。エラそうに……。威張るんじゃないよ……と。
第一に、今回の「事業仕分け」というものが何のためにおこなわれ、それが、なぜ必要なのか……という根本のところが、何一つわかっていない。そして、それが、国民からも注目され、そこそこ評価されているという空気も読めていない。
政権交代なきままに、旧政権のながねんにわたる数かずの失政に、国民は蹂躙されてきた。天下りのよる政官癒着、カネの問題……、数え上げればかさに「浜の真砂」ほどあるだろう。
新政権をもろに支持するわけではないが、ともかく旧政権の「官僚への丸投げ政治」をみなおして、国民の側にひきよせようとしている。初めての試みだから、いまはまだ手探り状態で、いろいろ問題があるのはしかたがない。だが国民は多くはその努力は評価し、期待も高まっているのは事実だろう。
お役人の天下りのために、ペーパー・カンパニもどきの団体、名まえだけの公益事業団体が「浜の真砂」にようにつくられ、税金のながれが幾重にも錯綜し、なにがないやらわからぬように包みかくされ、あげくに利権をうみだして、多額の税金が食い物にされてきた。
だから、それをきっちり精査して、政治と行政の過去の問題点をすべて国民の目のまえに明示する。「事業仕分け」というのは、そういう手続きであろう。だから、新政権の予算編成前に先だっておこなわれているのである。
しかも「事業仕分け」そのものは、ある意味では残念というべきか。何の法的拘束力もないのである。強権を発動して、予算を削減しているのではない。いわば「検証」行為なのである。
あのお偉い学者や大学のセンセがたはそこのところが、何もわかっていない。ただただ雁首そろえて、横一列にならび、ひたすら、自分の理屈をならべたてているだけ、ようするに自分たちだけよければいいという理屈である。いかにも視野がせまく、「旧権力の代弁者」になりはてている。がっかりさせられたのである。
学問もスポーツもそして芸術もしかりである。その存在意義を説くのはきわて容易である。あの偉い先生も、そして五輪メダリストたちも、ある意味では、教科書的に総論をクソ真面目にのべたにすぎない。
そのていどのことは事業仕分け委員の人はもちろん、国民にしても十分に理解していることなのだ。
問題は錯綜した組織のありかたによって税金が消えていまい、先生がたの学問研究やエリート選手の強化育成に十分ゼニがまわらないという制度上のひずみにある。今回の「事業仕分け」は、そこのところにメスを入れようとしているのである。
そこのところをきっちり解決しなければ、先生方がとうとうとのべた高邁な学問のゆくえも、メダリストたちのいうスポーツの振興も、お先真っ暗になってしまうのである。
メダリストたちは、まあ、微笑ましといえるが、ノーベル賞をもらったほどの大先生たちの、あの大マジでの異議申し立て、知性の権化にしては、あまりにもオソマツというほかない。
Takehisa Fukumoto's essay and column studio
2009-12-02
ああ、事業仕分け!
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このBlogは小説書きの福本武久が「京おのこ」としてmixiにアップしている日記を再録したものです。
筆者が「見たこと」「聞いたこと」「考えたこと」を備忘録がわりにランダムに書き記してゆきます。自身の書く小説の舞台裏だけでなく、30年間追っかけている「駅伝・マラソン」のこと、仕事をはなれて、「競馬」や「競艇」についてのトピックやエッセイなど……。
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