きょうは広島、3日後には長崎で原爆忌である。あれからすでにして63年……である。被爆者のうち、生きながらえた人たちも少なくなり、生存している人たちも高齢化がすすんでいる。
「やがて、被爆した人たちがひとりもいなくなる日がやってくる。そうなれば原爆の恐ろしさが完全に風化してしまう。だから被爆者自らが肉声でかたる被爆体験を記録にとどめ、後世にのこす必要があるのではないかと思ったのですよ」
元長崎放送記者の伊藤明彦はそのようにかたった。かつてある本づくりの取材で訪問、話を聞いたときのことである。あのときの伊藤さんの表情を今もわすれられないでいる。
伊藤さんは42年間にわたって全国を歩きまわり、1,000人をこえる被爆者の声を収録、その録音テープは951巻きにおよんだ。コンパクトば録音機材のない時代、重たいオープンリールの録音機をかついで被爆者をたずねてまわった。
収録したテープは何年もかかって編集、コンパクトのテープやCDに編集、全国の図書館や学校など公共の移設に寄贈しつづけてきた。むろんどこからの援助もうけていない。すべて自費である。
それにしても42年とは、とほうもない道のである。人生の最も熱い季節をすべて費やしたといっていいだろう。 マスターテープの寄贈先がきまったとき、伊藤さんはひとまず長い旅をおえたが、インタネットの時代になって、また、思い立ってあるきはじめた。さっそく協力者によって「被爆者の声」(http://www.geocities.jp/s20hibaku/)というサイトがつくられ、原爆被爆者284人の証言を集めたCD作品をパソコンで聞けるようになった。
被爆者たちの声をアメリカの若者たちに聞かせたい……。インタネットならそれができる。協力者の手によって、英語字幕版がつくられ、いまでは全世界に配信されている。先日、その伊藤さんからメールがとどいた。
「伊藤明彦です。こんにちは。「被爆者の声」の英語字幕版「voshn.com」ですが、映像制作のプロのご協力により、CMを作成しYouTubeに投稿しました。 ご覧頂ければ幸いです。外国人のお友達にもご紹介下さいますよう。」
英語字幕版(http://www.geocities.jp/s20hibaku/voshn/)は被爆者の肉声を耳で聞きながら、パソコンの画面ではその英訳が読めるという仕組みになっている。小刻みにクリックしなければならないのが、ちょっとめんどうだが、音声はすばらしいものにしあがっている。
あと30年もすれば、すべての被爆者は地上から姿を消すだろう。だが伊藤さんのテープは貴重な歴史の証言として残るもし広島、長崎の体験をわすれるような事態がみえれば、伊藤さんのテープにおさめられた1000余人の声が厳しく断罪することだろう。
Takehisa Fukumoto's essay and column studio
2008-08-06
被爆者の声と伊藤明彦さん
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このBlogは小説書きの福本武久が「京おのこ」としてmixiにアップしている日記を再録したものです。
筆者が「見たこと」「聞いたこと」「考えたこと」を備忘録がわりにランダムに書き記してゆきます。自身の書く小説の舞台裏だけでなく、30年間追っかけている「駅伝・マラソン」のこと、仕事をはなれて、「競馬」や「競艇」についてのトピックやエッセイなど……。
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